第五話「さいなら? テツとこけし」

ヒヲウ戦記五話より。テツとジョウブ

小さい頃・・・小学校低学年か幼稚園だった頃合いに、


「隣のYさん家にお泊まりしたい!」


と、言い出した事がある。
当時の記憶をほじくり返してみても、Yさん宅に何の魅力があったのか全然解らないんだけど、兎に角、僕は自分から「お泊まりしたい!」と言い出し、Yさん宅に一晩泊めて貰う事になったのだ。
泊めて貰う事になったのだが、夕飯を頂き、就寝する前には「他人の家に居る不安」に駆られ、たかが距離にして10メートル以内に位置する筈の「いつもの場所」に対し、ホームシックじみた症状を起こし、泣き出してしまい、結局、Yさん宅には泊まらないまま、散々周囲をお騒がせした挙げ句、いつもの部屋へ帰ってしまっていた。


さて、ヒヲウ戦記五話は、毒キノコに当たったテツ*1を治療する為、泊まらせて貰った家の夫婦に「この子達に旅は無理だからテツとジョウブ*2を養子にしたい」と言われ、選択をテツに委ね、一度はテツが承諾し、ヒヲウ達は先へと旅だってしまう。然し、矢張りテツはジョウブを抱き、ヒヲウ達を追うのだった…というのが大体のあらすじだ。


例えばソレは「子連れ狼」において拝一刀が未だ赤ん坊である大五郎の前に刀と玩具とを置き、玩具を選ぶ様ならば足手纏いになるから切り捨てようと選択を迫る場面があるのだけれど、ソレ同様に無意識な赤ん坊に迫るのでは無く、自意識のある5歳児が流され、思考し、結果、自身で旅路を選択をするのである。
見方によっては「機動戦士ガンダム」における子供達、カツ、レツ、キッカ的な70〜80年代的ロボットアニメフォーマットに準じるが為の1話に見えなくも無いが、他人の家へ泊まろうとし、逃げる様に戻ってきた経験のある自分からすれば、この回におけるテツの安易だが後々になっていつもと違う事が怖くなって来てしまう様な心情が凄く、物凄く良く解る説得力に満ちた回なのである。


以下、気になった所とか。

・Aパート中盤における授乳シーン

・同、授乳シーン。徐々に画面がハーモニー調になる事で「暖かさ」が伝わっていく表現



・Bパート中盤、普段ジョウブが乗る金ダライへ石を乗せるマユ

・同、Bパート中盤、揺れる金ダライを見るマユ。台詞には発しないがそこに居ないジョウブへの思いが伝わる見せ方。



脚本:荒川稔久
絵コンテ・演出:森邦宏
作画監督竹内浩志

機巧奇傳ヒヲウ戦記 DVD-BOX(上)

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*1:ヒヲウの弟、5歳

*2:ヒヲウの弟、1歳と2ヶ月